用途からみた小麦粉に求められる品質特性
日本の小麦粉の主な用途
日本における小麦粉の主な用途は、パン、めん、菓子と家庭用である。
小麦粉は、それぞれの用途が必要とする品質特性を持つように作られている
(業務用は割愛)
小麦粉にはいろいろな種類がある
日本には、小麦粉についての定義や規格は設けてありません。
小麦を粉砕し、小麦を粉砕、ふるい分けしたもの
粒度が比較的細かいものが「小麦粉」と呼ぶ。
粒度が粗いものは「セモリナ」と呼ぶ。
小麦を粉砕しただけで、ふるい分けしてないものは「小麦全粒粉」で「グラハム粉」(全粒粉の普及に尽力した米国の医師の名前)とも呼ばれる。
実用的な粉の種類
小麦粉の品質は複雑なので、数値などでは分類しにくい。
実用的には、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉という種類と、1等粉、2等粉、3等粉、末粉(すえこ)などの等級の組合せで大まかに分類される。「強力1等粉」とか「中力2等粉」のように呼ぶことが多い。
原料小麦の使い分けと組合せから
小麦粉の用途を必要とするグルテンの力によって大きく4つに分け、それらに対応するように、強力粉、準強力粉、中力粉、薄力粉が作られている。
強力粉は蛋白質の量が多く、グルテンの力も強い。
準強力粉は強力粉に準ずる蛋白質の量とグルテンの力を備えている。
薄力粉は蛋白質の量が少なく、グルテンの力も弱い。
中力粉は強力粉と薄力粉の中間だが、やや薄力粉寄りである。
これらは大きな分類だが、それぞれに分類される小麦粉にも、蛋白質の量やグルテンの性状が微妙に異なるものが数多くある。
小麦は産地や銘柄、等級によって蛋白質の量とその質が異なり、グルテンの力に差がある。用途によって使い分けをしている。
使用する小麦の種類と配合率が、小麦粉の品質を決める。
蛋白質の量の目安は、強力粉が11.5~13.0%、準強力粉が10.5~12.5%、中力粉は7.5~10.5%、薄力粉は6.5~9.0%である。
食パン用には主としてグルテンの力が強い強力粉が使われる。
菓子パンには準強力粉も使われる。フランスパン用粉のグルテンの力は準強力粉に近いが、小麦の配合に工夫をして本場のものに近づけている。
中華めん用は準強力粉である。
日本めん用にはグルテンの力が中庸な中力粉が適している。
和菓子の一部にも中力粉は使われる。グルテンの量の少なさと質のソフトさを必要とする多くの菓子や調理用には、薄力粉が向けられる。
スパゲティやマカロニなどのパスタには、デュラム小麦からのセモリナが使われる。
家庭用粉の大部分は料理、クッキー、手打ちうどんなどに幅広く使える薄力粉である。パンや餃子の皮用には、強力粉又はパン用粉がある。ケーキ用には用途が広い薄力粉のほかに、蛋白質の量がより少なくてケーキへの適性が高い薄力粉や、菓子用又はケーキ用小麦粉が市販されている。手打ちうどんには用途が広い薄力粉が向いているが、うどん用粉と銘打った製品もある。
小麦粉の用途 | 小麦粉に求められる特性 | 小麦に求められる特性 | ||
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パン用 | 1 | 吸水が良い | 1 | 蛋白質の量が多く、グルテンの質が強靭だが伸展性に富む |
2 | 生地をつくりやすく、取扱いやすくて、機械への適度の耐性がある | 2 | でんぷんの特性がパンに向いている | |
3 | 体積が大きくておいしいパンを、歩留り良くつくれる | 3 | α一アミラーゼ、蛋白分解酵素の活性が低い | |
中華めん用 | 1 | めんの食感が適度の弾力に富み、ゆで伸びが遅い | 1 | 硬質系の小麦で、適量の蛋自質を含む |
2 | 生めんが冴えた色合いで、ホシが少なく、経時的な変色が少ない | 2 | めんに向く性質のでんぷんを持つ | |
3 | 胚乳の色が冴えた明るい色で、経時変色が少ない | |||
4 | α一アミラーゼ活性が低い | |||
日本めん用 | 1 | ソフトだが弾力があって、滑らかな食感のめんができる | 1 | 中庸の質のグルテンを持つ軟質ないし中間質の小麦 |
2 | 冴えた、きれいな色のめんができる | 2 | 小麦の蛋白質の量が10~11% | |
3 | ゆで上げ時間が適度で、ゆで伸びしにくいめんができる | 3 | めんに向く性質のでんぷんを持つ | |
4 | 胚乳の色が冴えた明るい色 | |||
5 | α一アミラーゼ活性が低い | |||
菓子用 | 1 | 体積が大きく、きめ細かくてソフトな内相のケーキができる | 1 | 蛋白質の量が少なくて、その質がソフト |
2 | よく広がり、口溶けが良いクッキーができる | 2 | でんぷんの糊化特性が菓子に向いている | |
3 | α一アミラーゼ活性が低く、アミログラム粘度が正常 |
出典:小麦・小麦粉に係る基礎知識 (一般財団法人製粉振興会 参与,農学博士 長尾 精一)抜粋参照